朝礼や研修の賃金が未払いになっていませんか?【経営者向け】
最終更新日 2024年8月28日
今回は、「新しいガイドラインと労働時間」です。
経営者の皆さん向けですが、社労士の皆さんも復習を兼ねて一緒にお付き合いください。
さて、経営者の皆さん、
「労働時間なんて、要するに働いている時間じゃないか」
と思っていませんか?
実はそれほど簡単ではありません。
実際、経営者が労働時間でないと思って賃金を支払わなかった時間についても、
労働時間と認定され、未払賃金を支払わされた裁判例はこれまで沢山あります。
当事務所弁護士も、過去に次のような経験がありました。
とある特別養護老人ホームで、介護職員が夜勤の際フロアを1人で担当していたのですが、
就業規則では、勤務時間中のどこかで2時間仮眠休憩を取るものと定められていました。
そこで、経営者は、その2時間分の賃金を支払わなかったのですが、
この点が裁判で大いに争われ、結局、経営者は2年間の未払賃金などを支払う
敗訴的和解をすることになりました。
このように、労働時間は判断を誤りやすい問題なのです。
こうした判断を誤りやすい労働時間について、
今年1月、厚生労働省は、従来の通達を一歩進めて、
「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を示しました。
もちろん、このガイドラインは行政解釈に過ぎませんが、
従来の裁判例を踏まえたものとなっていますので、今後、裁判の基準になる可能性は高いといえます。
ですので、今回、経営者の皆様には、
労働時間を正確に理解して勤怠管理をしていただきたいと考え、
上記のテーマを取り上げました。
前置きが長くなりましたが、ここで経営者の皆様に質問です。
社労士の皆様は分かっておられるかもしれませんが、確認の意味で読んでみてくださいね。
(1)朝礼時間は労働時間でしょうか?
→ 出席を義務付けられている場合は、たとえ就業規則で労働時間とされていなくても、労働時間です。
(2)仮眠している仮眠時間や、待機している手待ち時間は、労働時間でしょうか?
→ 実際に作業していなくても、何かあれば対応しなければならないなど、労働からの解放が保障されていなければ、労働時間です。
このあたりはご存知の方もいらっしゃるでしょう。
では、以下の質問はどうでしょうか?
(3)研修や教育訓練の受講、業務に必要な学習を行っていた時間は労働時間でしょうか?
→ 使用者からの指示がある場合はもちろん、職務性が強く出席しなければ業務に差し支える場合は、労働時間です。
これが、今回のガイドラインで明記された点です。
(4)一般健康診断の時間は労働時間でしょうか?
→ 労働時間ではありません。しかし、賃金を支払うことが望ましいとされています。
(5)専門職などで、労働者の裁量がある場合でも、働いている時間は労働時間でしょうか?
→ 使用者の指揮命令の要素が希薄ではありますが、労働時間と考えられています。
ご自身の感覚と一致していたでしょうか?
まとめると次のとおりです。
○ 労働時間かどうかのポイント
(1)労働者の行為が使用者の指揮命令下にあれば労働時間であって、就業規則等の取り決めは関係ない、
(2)労働者の行為が、使用者から義務付けられた場合だけでなく、余儀なくされていれば労働時間である
(3)労働からの解放が保障されていなければ、労働時間である
(4)研修等も労働時間とされる可能性がある
以上を踏まえ、経営者の皆さんには、ぜひ以下のことを
やっていただきたいと思います。
(1)御社において労働時間に該当するかどうか微妙なケースを洗い出す
(2)上記ポイントに従って検討した結果労働時間であると判断した場合は、賃金支払いの対象とする
(3)そのために就業規則等を修正する必要があれば、修正する
今回は以上となります。
とはいえ、労働時間かどうかの判断はやはり難しいものです。
ご不明な点があれば、お気軽に当事務所までご相談ください。