運送業界は要注意!労基署が監督指導に入ると8割以上が違反。送検も!【経営者様向け】
最終更新日 2024年8月28日
トラック、バス、タクシー業界の皆様、突然ですが、労基署対策は大丈夫ですか?
・うちはまだ労基署の監督指導を受けたことはないよ
・これまで従業員ともめたことはないので大丈夫
そのように思っていませんか?
今回は、運送業界に労基署が指導監督に入ったらどのようになるかをお伝えします。
厚労省がこのほど2016年にトラック、バス、タクシーなどの
自動車運転者を使用する事業場に対して行った監督指導の結果を発表しました。
それによると、監督指導を実施したのは4381事業場で、
このうち実に82.9%にあたる3632事業場で労基法令違反が認められました。
労基法令違反は、労働時間が55.6%と一番多く、
次いで割増賃金の支払が21.8%、休日が5.0%となっています。
さらに、重大・悪質な違反により送検したのは68件に上りました。
つまり、略式起訴され、罰金刑を受けることがあるのです!
このように、運送業界は、労基法令違反という事態が起こりやすく、
それだけにとくに普段から法令順守を心がける必要がありそうです。
労基署による監督指導は、労働者などからの通報などをきっかけとして実施されます。
そして、監督指導で済めばよいですが、
重大・悪質な法令違反が認められる場合は、送検されるのです。
では、どのようなケースが送検されるのでしょうか?
送検事例1
「運転者に脳・心臓疾患を発症させた事業場において、この運転者等に違法な長時間労働を行わせていたとして送検」
運転者が配送先において、作業中にくも膜下出血を発症したため、労災請求が行われました。
調査したところ、この運転者を含む運転者3名が、36協定の限度時間である1か月100時間を超え、1か月で120時間程度の時間外労働を行わせていたことが判明したため、事業場(法人)と営業所長が送検されました。
コメント:違法な長時間労働を軽く考えていると、運転者が脳卒中で倒れるなどした際、送検されるかもしれません。
送検事例2
「過去に違法な長時間労働について指導を行っていた事業場に立ち入り検査を実施した結果、同様の法違反を繰り返していたため送検」
立ち入り調査の結果、運転者4名に対して、36協定の限度時間である1か月120時間を超え、1か月で最長200時間程度の時間外労働を行わせていたことが判明しました。
その事業場は、直近の立ち入り調査においても、違法な長時間労働について是正勧告を受けており、一度は是正が図られたものの、短期間に同様の法違反を繰り返し発生させていたことから、悪質と判断され、事業場(法人)と営業所長が送検されました。
コメント:かつて労基署調査が入ったことがある事業場も、のど元過ぎれば熱さ忘れるというわけではないでしょうが、しばらくすると、再び違法な長時間労働を行わせてしまうことがあるようですが、そうした場合、悪質として送検されるかもしれません。
送検事例3
「運転者が死亡する交通災害を発生させた事業場において、この運転者に違法な長時間労働を行わせ、また健康診断を行っていなかったため送検」
トラックが高速道路で渋滞中の車に追突し、複数台が絡む玉突き事故を発生させ、その結果、トラック運転者が死亡し、複数人が重軽傷を負いました。
トラック運転者の所属事業場に対する立ち入り検査の結果、事故直前の10日間に、36協定の限度時間を超え、合計約50時間の違反の長時間労働を行わせていました。
のみならず、深夜勤務にもかかわらず6か月に1回健康診断を受けさせていなかったことが判明し、事業場と営業所長が送検されました。
コメント:違法な長時間労働が運転者だけでなく周囲を巻き込む痛ましい事故を発生させました。また、深夜勤務の従業員は、1年に1回ではなく、6か月に1回の健康診断が必要なことを知らない経営者の方も多いようですが、労働安全衛生法違反となります。
このように、トラック、バス、タクシーといった運送業界は、労災や事故などの重大な結果と隣り合わせであるにもかかわらず、違法な長時間労働が放置されやすく、労基署がらみの労務問題にさらされています。
また、未払残業代請求も受けやすい業界といえるでしょう。
しかも、そうした労務問題が発生すると、莫大な賠償や刑事罰という形で、企業の存続を左右しかねない結果が生じます。
そこで、トラック、バス、タクシー業界の皆様には、労務問題が発生する前に、違法な長時間労働を防ぐべく、労務に強い弁護士への相談を強くお勧めします。
参考文献:労働法令通信No.2462