問題社員等を解雇できるか?
最終更新日 2024年8月28日
経営者としては、従業員に良いパフォーマンスをしてもらいたいと願ってるはずです。
しかし、実際には、そのような思いが通じない問題社員等がいるのも事実です。
- 従業員がうつ病で長期休業しており、これ以上雇い続けられない・・
- 従業員の営業成績が悪すぎるので、辞めてもらいたい・・
- 従業員が遅刻や欠勤を繰り返すので、解雇したい
- 従業員が経歴詐称していたことがわかり、信頼できない・・
- 従業員が業務命令やルールに従ってくれない・・
- 問題社員に退職を勧めても、なかなか辞めてくれない・・
当事務所にはそうした問題社員等(※)のご相談が日々寄せられています。
では、そうした問題社員等を解雇できるでしょうか?
できるとすれば、どのようにしたらいいでしょうか?
※うつ病で長期休業中の社員について、「問題社員」と呼ぶのは気の毒です。ただ、人的理由で辞めていただきたいケースの一つという点では問題社員と変わりませんので、問題社員と併せ「問題社員”等”」と呼ぶことにします。
解雇には厳しい規制が・・
解雇には、労働契約法16条により、
①客観的に合理的な理由があること
②社会通念上相当であること
という規制が課されています。
そして、A、Bともにクリアする必要があるのですが、これがなかなか大変です。
解雇規制の具体的内容とは?
では、上記①、②は、具体的にはどのような内容でしょうか?
①客観的に合理的な理由があること
①は、大きく3つの内容に分けられます。
①ー1 就業規則上の解雇事由に当たること
まず、従業員を解雇するには、そのケースが就業規則上の解雇事由(○○の場合は解雇できる)に当たることが必要です。
ですので、まずは就業規則をよく読み、解雇事由に当たることを確認しましょう。
①ー2 今後も満足な労働が期待できないこと
うつ病により休業している従業員の場合は、今後もうつ病で満足に労働できないことが必要です。
ただ、その判断は経営者が勝手に行うのではなく、医師による専門的な判断を仰ぎましょう。
従業員の能力不足や成績不良の場合は、要求されている能力(専門的かどうか、重い管理能力が求められるかどうか)を踏まえ、今後も満足に労働できないことが必要です。
欠勤、遅刻、経歴詐称、業務命令やルール違反の場合は、違反の程度や反復継続から、改善の余地がないことが必要です。
①ー3 最終的手段であること
これは結局、解雇回避措置(指導、職種転換、配転・出向、休職など)があるかどうか、あるとしてこれを尽くしたかどうかという話です。
ただ、解雇事由が重大な場合は、解雇回避措置を取らなくても仕方がありません。
②社会通念上相当であること
②は、①があることを前提に、解雇事由とのバランスで、労働者に有利なあらゆる事情(反省、過去の勤務態度・処分歴、年齢・家族構成など)を考慮しても解雇が酷でない、ということです。
解雇事由とのバランスですので、解雇事由が重大な場合は、労働者が真剣に反省していても、解雇は有効となりえますし、逆に、組合つぶしなど他の目的でたまたま存在する解雇事由にかこつけて解雇する場合は、バランスを考慮するまでもなく、解雇は無効となります。
また、労働者に弁明の機会を与えたかどうかも問題となり、弁明の機会を与えないと、解雇は無効となりえます。
うかつに解雇すると大変なことに!
従業員を解雇したが、①または②をクリアしない場合は、解雇は無効となります。
つまり従業員を解雇したつもりでも、まだ在籍している扱いになり、賃金を未払分を含め支払わなければならないことになります。
とはいえ、いったん形の上で解雇した以上、従業員との信頼関係は失われており、従業員に勤務を続けてもらっても、積極的に勤務してくれるわけはありません。
ですので、解雇が無効な場合は、結局、企業が従業員にお金を積んで自発的に退職していただくことになります。
ですが、従業員がノーと言えば賃金を支払い続けなければならず、キャスティングボードは従業員側にあるため、退職の際に渡すお金は、小銭程度ではすまず、何百万円と大金が必要な場合すらあります。
しかも、辞めてもらうまでは所定の賃金を支払わなければならないので、企業の負担は大変重いものになります。
さらに、従業員の解雇が争われた末無効となれば、会社のイメージダウンになり、「ブラック企業」とのレッテルを張られ、取引先や他の従業員の信頼をも失うおそれあるのです。
ですので、できれば問題社員等は配置転換するなどして、解雇を避けた方が得策です。
ただ、どうしても問題社員等を解雇する必要がある場合は、なんとしても有効に解雇する必要があります。
問題社員等を有効に解雇するには?
では、問題社員等を有効に解雇するにはどうすればいいでしょうか?
それは、先ほどの①、②を満たすように解雇することです。
ただ、上記のとおり、①、②をいずれもクリアするのは簡単ではありません。
そこで、問題社員等をどうしても有効に解雇したい場合は、労務に強い弁護士に相談することをお勧めします。