労災認定を受けると企業にとって何がデメリットか?
最終更新日 2023年1月13日
労災は、何よりも被災労働者にとって、とてもいたましいことです。
他方、企業側にとってはどうでしょうか?
- 労災保険は労災の有無にかかわらず強制加入
- 労災保険給付は国が支給するものなので、企業の負担はない
などと、労災が発生しても企業側には関係ないと考えていませんか?
実は、労災認定は、企業側にも大きなデメリットがあります。
◆労災認定の4つのデメリット
①労災保険料の上昇
労災保険徴収法12条3項は、自動車保険と同様、保険給付額に応じて保険料を変動させるメリット制を採用しています。
具体的には、一定規模以上の事業においては、業務災害に関して行われた保険給付の額が増減した場合には、労災保険料率を一定範囲内で引き上げ又は引き下げるものとされています。
ですので、保険給付が増えると、保険料が上がる場合があるのです。
②多額の賠償責任
労災認定されると、労働者の企業に対する損害賠償請求訴訟においても、実際上、賠償責任が認定されやすくなります。
とくに、労働者がうつ病で自殺した場合は、賠償責任が高額に上るので注意が必要です。
例えば平成3年に発生した電通事件では、総額1億6800万円もの高額な賠償金等が課されました。
③刑事責任
労災が労基法違反を伴う場合、労基署の調査(臨検)を経て、書類送検され、企業やその役員が刑事罰を受けるおそれがあります。
④ブラック企業とのレッテル
メンタルヘルス不調者が発生する会社は、いわゆるブラック企業との悪評が付き、取引先の信頼を失います。
それどころか、少子高齢化と好景気による人手不足の昨今、離職者の増加やリクルートの困難につながるおそれがあります。
労災を起こさない職場作りを
このように、労災は、労働者のみならず企業側にとってデメリットが大きいので、できる限り発生させるべきではありません。
そこで、労務に強い弁護士を入れ、労災を未然に防ぐ体制を作ると同時に、将来万一労災が発生した場合にしっかり備えることが大切です。
労災を機に、労働トラブル予防を
労災の発生は氷山の一角で、労務管理全般に問題があるかもしれません。
労災の発生を機に、労務に強い顧問弁護士を付け、労働トラブル全般を予防することをお勧めします。